2020年11月4日水曜日

馬上剣術の伝書

 燕飛とは関係ありませんが、馬上剣術についてのものと思われる伝書二巻(天保9年正月)を紹介します。
 残念ながら、伝書の発給者である松井一磨も、授与された土田基太郎も何者か不明です。もしこのブログを見た方で何かご存じの方がいれば、ご教授いただけると幸いです。
 この伝書二巻はそれぞれ、馬上属伝剣術初目録、馬上属伝剣術表裏目録と題されています。これ以外にも免許等が存在するのかもしれませんが、武芸流派大事典にもこの武術は載っておらず詳しい事は不明です。


馬上属伝剣術初目録

 馬上立合之事、馬上太刀抜様之事に続いて、太刀(技法)名と思われる猛虎剣、転身剣、占位剣の三つ、さらに短刀、二刀、心得と思われる手足体、目当目付、間積の合計10箇条が最初に書かれています。右十箇条折衷諸家之所とあるので、諸流から選んだ(折衷した)ものということでしょうか。

 この後、馬上属伝剣術目録として馬上太刀討、甲冑組合組討、船中太刀合、山中太刀合など各種の教えが15箇条あり、伝書の形式通り、最後に秘事を相伝するとの文と発給者等の名前があります。





馬上属伝剣術表裏目録

 最初に表裏目録として上中下段等の教え(太刀技?)についての項目、仕合口、三段三相(構えか?)、八重垣之大事、小太刀、索法、当身などの目録があり、さらに目録として呑剣、絶妙、潜龍、青眼、丸橋、中道、霞、隠剣および入定として四つの項目があります。
 目録の内容は丸橋、中道ともに心形刀流の構えや形名で、隠剣や本覚は一刀流や中條流で用いられる用語です。初目録に折衷諸家とありますし、心形刀流や一刀流に縁がある人物が作った目録なのかもしれません。







武芸流派大事典の新陰流系図についての検証

綿谷雪・山田忠史 編「増補大改訂 武芸流派大事典」は出版から数十年経た現在でも伝統武術について調べる場合の必須の資料です。時代を考えるとすさまじい仕事です。 ですが、昔から知られている通り、間違いが多い事でも知られますし、独自の記述についても出典が書かれていないので検討しようが無...